「オオカミ県」
多和田葉子 文, 溝上幾久子 絵
論創社(2021.4.20初版)
田舎者=オオカミ、東京の連中=ウサギ。
ウサギたちは、実はウサギのふりをしている色々な動物。
嘘と本当が混在する「風の噂」というウェブサイトや
オオカミ県から東京に毛皮を輸出できないようにして
バナナ爆弾工場の設置を受け入れるしかない状況に追い込む計画……などなど
比喩にリアリティがある。
ストーリーもさることながら
幻想的な銅版画の描写が素晴らしくて引き込まれる。
「ウサギ」
ジョン・マーズデン 文, ショーン・タン 絵, 岸本佐知子 訳
河出書房新社(2021.1.30初版)
海からやってきたウサギたち=人間、西洋人、外来種。
わたしたち=自然環境、先住民、在来種。
価値観や文化の違いによる衝突。
あまりにも多くのウサギたちによって
やがて大地は枯れ果ててしまう。
どこに救いを求めたらいいのか……
"最初のうち"には描かれていた曲線が
次第に直線だらけになっていく。
デフォルメされたウサギが、不気味でこわい。
どちらの作品もウサギが、多数派の論理や都会・文明、
そして征服のメタファーとして描かれている。
前者は、それでも立ち向かっていく(弱者のままではない)という
希望が見いだせるが
後者は、問いを投げかけられた読者に委ねられているという印象。
どちらも、画集としても成り立つほどの作品。
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